夏目血風録

第25話

2013年10月21日(月) 掲載全32話中 25話目

前回は10月14日23:47参照

田吾作から静岡で就職する決心を聞き、19歳の夏は寂しさとともに終わりを告げた。

親に学費と家賃を負担して貰い、さらにパチスロで勝っていたせいもあり、生活に余裕があった俺とは境遇が違ったのだろう。

田吾作は彼女の家に居候していたとは言え、生活費、車のローン、駐車場代(月3万)を捻出し東京で生活するのはキツく、東京の厳しさを感じたとの事だった。

さらに追い打ちをかけるように田吾作とエビス丸がトラブルを起こし揉めていた。
そして彼らは、相変わらず俺の資金でパチスロを打とうと目論んでおり、さすがに頭にきた俺は一方的に絶交してしまった。

こうして二人の幼馴染と別れを告げ、2006年9月、俺は再び東京で生活を始めた。

新学期が始まり学校に行くと明らかに同級生の数が減っていた。

きっと現実を見ることにより、挫折感を覚えたのだろう。
そんな中、自分も実力のなさを痛感していた。
静岡に帰省していた間も毎日発声や柔軟といった基礎レッスンは欠かさず行っていた。

俺から見たクラスメイトは全く努力せずに遊んでいる者ばかりで、授業中もセリフを覚えてこなかったり、ふざけたりしていたりとどこか馴染めずにいた。

そんな中、毎日黙々と練習に励む女性がクラスにいた。
彼女は意味もなく人と交わる事はしないが社交性があり、そして誰よりも努力していた。

授業に取り組む姿勢や話が合い、気が付けば俺は彼女と仲良くなっていた。
彼女は160?程の背丈で、香里奈似の顔つきで、サバサバとした性格ながら、俳優に対する熱意は誰よりも強かったと思う。

アクションもできる女優を目指しているらしく、夏休みも実家に帰らずにひたすら練習し、自分にはできないアクロバットも楽々とこなしていた。

同級生だというのに力の差を感じ、とても悔しかった。
俺は彼女の俳優に対する姿勢や情熱に刺激を受け、いつの間にか俺も朝から晩まで練習に励んでいた。

自然にホールに行くペースも減り、そのうち俳優に専念するため、パチスロを打つ事を禁止にした。

そんな努力が功をなしたのか、学校内の自主制作のPVの主演に抜擢された。

通っていた専門学校では学校側が決めたチーム制作と、監督専攻がオーディションをしてメンバーを集める自主制作があった。

圧倒的に後者の方が作品としての完成度も高く、競争率も高かったので、それに挑戦する俺自信も気合が入っていた。

そして、偶然にもこの作品には同級生の彼女も選ばれていたのだった。

…つづく。

出典: パチマガスロマガ「決死のパチスロサバイバル日本縦断編5」内の不定期連載「夏目血風録」(2013年10月21日(月) 掲載)。 本文は当時の掲載どおりで、書き換えていません。