夏目血風録

第12話

2013年7月31日(水) 掲載全32話中 12話目

前回は7月18日14:31参照

自分にとって大切だったバイトと最悪な形で決別した夏目五郎。

4月にはバイトを辞める予定だったので、予定外の辞め方だったこと以外は後悔はなく、毎日パチスロを打てることが嬉しかった。
絶好調だった俺は負ける事がほとんどなく、自分の貯金がいくらまで増えるのかワクワクしているほどだった。

また、バイトをしなくなり自由な時間が増えた事で、友達と過ごす時間も増えた。俺は卒業記念だとか同級生と遊ぶよりも、パチスロを打つことに価値を感じていたので、田吾作とパチスロを一緒に打つ事が多かった。

しかし、エビス丸とは“一緒にいるとヒキが弱くなる”と言う意味不明な理由で遊ぶことが減っていた(笑)。

もう一人の友人・田吾作は、幼稚園からの幼なじみで中学生まで同じだった。
今思えば、俺は彼の背中を追いかけていたんだと思う。
小学校の頃に彼が習字を習えば俺も通い、少年野球を始めれば俺も真似して同じ少年野球団に入団した。

こう言うとおかしいかもしれないが、それだけ田吾作と一緒にいたかったんだと思う。

しかし、中学生になるとその関係は急変。
口を利くことすらなくなってしまった。

理由は俺のプライドや嫉妬心だろう。
まず中学生になるとテストで順位が発表された。
俺は自信があったものの結果は350人中113位という屈辱の結果。

田吾作は13位…!!
さらに野球部でも、田吾作が一年生の時からレギュラーとして活躍する一方で、俺は背番号を貰うのがやっとだった。

ずっと一緒に時間を過しただけあって、この差にはショックを受けた。
悔しかったので勉強したものの、田吾作には一度も勝つことができなかった…。
そして、嫉妬心や田吾作の俺を見下したような態度が気に入らず、次第に会話することもなくなったのだった。

そんな俺の態度に田吾作も腹が立っていたらしく、学校帰りに喧嘩したこともあった。

それでも、半年ぐらい経つと少しづつ話すようにはなったのだが、お互い名前で呼ぶこともなくなり、気まずさが常に付きまとっていた。

しかし、ある事がきっかけで再び元の関係に戻ることとなる。
当時、所属していた野球部の顧問は素人なのに指導がめちゃくちゃで、俺には言っていることが理解できなかった。

そこで、その顧問を相手に俺が中心となり抗議している時期があり、試合中にベンチ内で乱闘騒ぎになったりしていた。
キャプテンが気にとめない中、当時副キャプテンだった田吾作は必死に俺を庇い抗議してくれた。

自分の立場を捨てて必死に抗議する姿に思わず目頭が熱くなったのを覚えている。
そんな事もあり元の関係に戻ったが、謝ることはできずに中学、高校と時間だけが過ぎていった。

そして、気付けば残された時間はあと僅か。
俺は4月から東京に行き、田吾作は静岡に残るのであと少しでお別れ。
ちなみにエビス丸は神奈川の大学に進むことにしたらしい。

そんな惜しまれる時間の中、田吾作と最後に北斗の拳を打ちに行くことにしたのだった。

つづく…。

出典: パチマガスロマガ「決死のパチスロサバイバル日本縦断編5」内の不定期連載「夏目血風録」(2013年7月31日(水) 掲載)。 本文は当時の掲載どおりで、書き換えていません。